「朝婿入」という語がある。嫁入り当日の前段階に、ムコがヨメの家に挨拶にやって来て、途中で逃げ出すというものである。もちろん儀礼上のパフォーマンスではあるが、朝の婿入りは軽視されており夕方の嫁入りの方に重点が置かれることによって、ヨメとムコの両者が相対化できるように位置づけられているといえるのである。この婿入りのときに、着飾った若い女性たちが婿を迎えるという風習が、かつて長崎県下にあった。女友だちが花嫁とともに待機して、後述するヨメマギラカシ、ヨメトギなどと同様の意味をもつのである。本来婚姻は男と女の合意のもとに対等に結ばれ、男と女が双方見合いをして相互の意思により、かけがえのない存在として一人一人が選ばれていくことを、形式的ではあるが示しているのである。