私が感心する一組の夫妻がある。私はその両方を知っていたのだが、「結婚します」と電話で言って来たが、結婚式の招待はこない。二人は、行くべきところは全部二人で行って、玄関先で挨拶した。「今度結婚しました。今後ともよろしくお願いします」。そして結婚式にかかる費用として貯えていた金を自分たちが出た施設に寄付をした。二人とも両親がいない孤児であった。結婚式に来てくれと言われるよりは、二人が挨拶に来てくれる方がこちらも助かる。招待されても行くのは一日がかりだ。二人は、世話になったひと、職場の先輩に手間暇かけさせず、いちいち頭を下げて回ったのである。何という賢明なひとたちかと、今まで会った新婚の二人の中で一番感心した。いわゆるホテルとか結婚専門のホールとかを使わないで自分の家へ招いたひともいる。昔は自分の家で結婚式を挙げるというのが普通であった。来てくださったお客に、心のこもった料理を食べてもらい、その家で何人かのひとびとが楽しく語り合ったり飲んだりする。手伝ってくれたひとのためには、また一日設けてその労をねぎらう。生活が派手になって、こうした地味な手作りの結婚式はあまり見られなくなったが、そろそろ復活してもいいのではないか。商業主義にあやつられてベルトコンベアーにのせられたように、決まり切った形式で進む披露宴。本人たちにとっては初めてであっても、招待された方は方々で同じようなことをやるので、実は心の中で「うんざり」「がっかり」ということもある。