手広くやりたいデザイナーには役立つ

2011.06.06

ライセンス事業も、ファッション界では昔から白い目で見られてきた。新たに中流層のファンを獲得したカルダンは世界で最もリッチなクチュールーデザイナーになったが、同時に、パリのオートクチュールの排他的監督組織であるパリークチュール組合から締め出されることになった。一九九〇年代も後期になると、ライセンス事業にそっぽを向く高級デザイナーが増え、ダッチやアルマーニを始めとする大勢のデザイナーが、ブランドーコントロールを取旦戻そうと、ライセンス契約を買い戻し始めた。そして、二〇〇〇年、カルバンークラインとそのライセンシーであるワーナコとの間で、あの有名な訴訟事件が起こったのである。訴訟を起こしたクラインは、ワーナコCEOのリンダーワッチナが、ディスカウントーストアに販売したり不認可のデザインにまでラベルをつけたりしてブランドーイメージを傷つけたと主張した。ちなみに、この事件が起こる前には、クラインの収入のうち、何と九〇%をライセンス商品が占めていたという。この訴訟は、ライセンス事業の実態を暴露してしまうことになった。消費者たちは憤った。「私たちの買ってるデザイナーズブランドの服って、実は二流メーカーが作ってたりするわけ?」。しかし、デザイナー側は、とんでもないと言う。ライセンス事業で組むのはその道のプロなのだから、製品の質はかえってよくなるのだ、と。確かに、たとえばデザイナーの名前でシルクーストッキングを製造するにしても、直接やるより靴下専門メーカーに任せたほうがいい仕事をするかもしれない。だが、どっちにも転び得るというのが正直なところだ。出来のいいライセンス商品も多い反面、デザイナーズブランドのラべルをひっ付けただけで中身はありきたりという場合も少なくないのだから。それでも後者にとっては幸運なことにファッションヴィクティムはどっちもありがたがってくれるのである。パリークチュール組合パリのクチュリエ(デザイナー)の同業者組合。通称サンディカ。年に二回オリジナルの作品を発表すること、二〇人以上の従業員を雇うことなどの条件があり、会員のみが「オートクチュール」を称することを許される。